- 2016-9-28
9月30日より東京・Zeppブルーシアター六本木にて開幕する、中屋敷法仁さん作・演出の舞台『露出狂』。
2010年の初演では、高校のサッカー部をモチーフに、部活という閉鎖された空間で繰り広げられる濃密かつ複雑な人間関係を、単なる青春賛歌で終わらない硬質な青春ドラマとして描き多くの反響を呼びました。
2012年のオール男性キャストによるリメイク公演から4年の歳月を経て上演される2016年版では、総勢32人の俳優による”露(あらわ)””出(いずる)””狂(くるう)”3チームの三つ巴の戦いが繰り広げられる!?
本作に出演する市川知宏さん、陳内将さん、そして中屋敷さんに、本作の魅力や見どころ、さらに学生時代の部活動の思い出など、たっぷり語っていただきました。
インタビュー直前、報道陣に公開されたワークショップで撮影した写真とともに、3回に渡りお届けします!
そのPart③は――
【部活の集団性や因果関係”だけ”に特化。試合シーンはないけど”萌え”はある?】
――作品の舞台は”部活”ですが、学生時代は皆さん何部でしたか?
市川知宏(以下、市川) サッカー部でしたけど、毎日毎日玉拾いばかりで、それが面白くなくて途中で辞めちゃったんです。陳内さんは何部でした?
陳内将(以下、陳内) 僕はソフトボールとサッカーと野球と陸上。
演出:中屋敷法仁(以下、中屋敷) なんでそんなにいくつも入っていたの?
陳内 小学校の時がソフトボールとサッカーで、中学校で野球やりつつ冬は陸上をやって、高校では陸上一本に絞って……っていう感じです。小学校~中学校は島の学校で生徒数が少ないこともあり、自分の希望とは関係なく「やらざるをえない」っていう状態でみんな同じ部活だったんですよ。高校に行って、やっと自分のやりたい部活に入るみたいな。周りの友達は野球部に行く人が多かったけど、僕は陸上で長距離ランナーをやっていました。
――中屋敷さんは、学生時代は何部だったんですか?
中屋敷 僕はずっと演劇一筋で、運動部に参加してこなかった人間なので、逆に運動部の人たちの思考には客観的に興味があったんですよね。「ずっと玉拾いばかりでも部活を辞めないのは、辞められない理由が何かあるはずだ」、「甲子園で砂を持ち帰るのは何故だろう?」とか。僕が全くそういう感覚が分からないがゆえに、そこにはロジカルには割り切れない、青春の”魔力”があるんじゃないかなと思い、人生で初めてスポーツを題材に書いたのが『露出狂』という作品。
スポーツなんだけど試合のシーンは出て来なくて、スポーツをしている集団の集団性とか因果関係っていう部分”だけ”を抽出して書くっていうところに、ある種の”萌え”を感じながら書いてましたね(笑)。
市川 あはは。”萌え”なんですね(笑)。
陳内 スポーツをやっていた立場から言うと、僕自身「なぜ僕は陸上部に入っているんだろう?」って自問自答しながら走っていた気がします。いまだに走っている夢を見るんですけど、「あ~、もう最悪だ、最悪だ!」って言いながら、それでも走ることをやめないんですよ。そうなると、もう悪夢ですよね。「過ぎてしまえば”青春の思い出の1ページ”」なんでしょうけど、特に全然そんな楽しくもなかったし。
(一同、爆笑)
陳内 高校野球とかやっていたら目的を同じくする仲間も増えただろうし、勝ち負けがはっきりしているから自分の中でも決着がつけられるんでしょうけど、陸上……特に長距離ランナーはある種、究極の自己満足。孤独ですよね。
――演劇も似たようなところありますよね。「なんで辛い稽古を経て舞台に立ってるんだろう?」って考えても、そこにゴールがあるわけではなくて、ゴールは演じれば演じるほど、もっともっと先にあるわけで……。
陳内 そうですね。なんか哲学的な話になりましたね。
――では、話を戻して……この舞台『露出狂』に出演した後に、自分の中に”何”が残ることに期待していますか?
陳内 最年少の18歳キャストは、ついこの間まで現役の高校生で”THE青春!”みたいなものは味わいたてだけど、28歳の僕は「青春ってどんなだったかな?」みたいなのも若干あるわけですよ(苦笑)。こうやって稽古場で共演者と共に作る、その作業さえも「青春だ!」ってフレッシュに感じたいですね! 稽古と本番を通して「いい青春だった」って爽やかに終われるように、演劇の楽しさも苦しさも味わいながら頑張りたいと思います。
市川 稽古でさらけ出して、本番では全力でぶつかって、最終的に達成感が残るように……。個人的なことだと、今回僕は名前がキャストの先頭にあるので、「自分なりの引っ張り方ができたのかな?」と思える瞬間があれば、それでいいかなと思っています。
――最後に、上演を楽しみにされている皆様にメッセージをお願いします。
陳内 カンパニーを引っ張ってくださる演出の中屋敷さんを信じて、僕らにしか出来ない呼吸や会話を稽古で積み上げて、それを本番でお客様に届けます。ぜひ楽しみに劇場にご来場ください。
市川 物語の舞台となる高天原高校(たかまがはらこうこう)サッカー部の”いざこざ”は、広い世界から見たら本当にちっぽけなものですが、そのちっぽけなチームには様々な変わった形の青春があって、その青春を観客の皆さんの青春と照らし合わせて笑っていただいたり、いろいろ味わってもらえたらうれしいなと思います。
中屋敷 青春の描き方・スポーツの描き方がかなり特殊ですが、バラエティ豊かなアプローチをしている作品です。皆さん自身の青春に対する想いだけでなく、今置かれている状況など、様々なことに対する印象をガラリと変える作品だと思っています。みんなで仲良く夕日に向かって走るみたいな紋切り型の青春ではなく、いかに青春というものが割り切りづらく、描きがたく、それでいて、もしかしたら一生青春時代に囚われて生きていくかもしれないというぐらい、いろんなものが渦巻いている作品ですが、観劇後は楽しくなると思うので……ぜひよろしくお願いします!
◆あらすじ◆
高天原高校サッカー部に入部した〈佐反町〉〈白峰〉〈比留〉の3人はその圧倒的な実力が災いし、入部早々先輩たちと対立する。同じ1年生の〈御器〉も含めた4人は、退部を掛けて上級生と真剣試合した結果、あっさり勝利をおさめてしまう。高天原高校サッカー部は1年生4人だけで再スタートを切ることになった。
とにかく、勝ちたい。
とにかく、勝てるだけ勝ちたい。
勝つために必要なのは最高のチームワークだと悟った彼らは、驚異的なまでの結束力を築く。
わずか3年で強豪校として全国に名を馳せるまでになった高天原高校サッカー部の掟とは?
個人の能力とチームの結束力を飛躍的に伸ばした秘訣とは?
部活という閉塞的社会で巻き起こる男同士のプライドを賭けた泥試合!!
ダマせ! 蹴落とせ! 這い上がれ!
こんな青春に誰がした!?
~了~
(取材・文/近藤明子)
☆Information
舞台『露出狂』
日程:9月30日~10月10日
場所:Zeppブルーシアター六本木
作・演出:中屋敷法仁
出演:市川知宏、陳内将、小沢道成、永島敬三/小野一貴、川合諒、ケイン鈴木、高良亘、
紺野真、坂口涼太郎、渋谷謙人、鈴木勝大、砂原健佑、田中穂先、畠山遼、松井薫平、
松井勇歩、見雪太亮/赤楚衛ニ、石賀和輝、井藤瞬、小松直樹、佐藤信長、三原大樹/
井澤巧麻、池本啓太、菊池修司、鈴木翔吾、髙橋里恩、中山龍也、飛葉大樹、三永武明
《公式サイト》
http://www.parco-play.com/web/play/rsk2016/