1985年にカナダで初演、その後ロンドンでも上演。本国カナダでは映画になり、2014年に日本初上陸を果たした『Being at home with Claude～クロードと一緒に～』。

若い男娼である「彼」と、彼の起こした殺人容疑を取り調べる「刑事」の緊迫した2日間を描いた本作は、2014年5月に「彼」相馬圭祐さん×「刑事」伊藤陽佑さん／「彼」稲葉友さん×「刑事」伊達暁さんのダブルキャストにより、日本で初演。2015年4月には松田凌さん演じる「彼」に対し、唐橋充さんと山口大地さんが「刑事」役と「速記者」役をスウィッチ・キャストで再映されました。

1年2か月の時を経て、今回『Being at home with Claude～クロードと一緒に～』が、Lecture-Spectacle(＝読み聞かせ)の朗読劇として、7月4日＆5日に新国立劇場 小劇場 THE PITで上演されます。

昨年に続き「彼」役を演じる松田凌さんに今回の朗読劇の意気込みや、「彼」に対する想い、今だから話せる前回公演の(秘)裏話など、2回に渡りたっぷり語っていただきました。
SPインタビュー前編は――

昨年の舞台版再演に続き「彼」役を演じる松田凌さん

【自分の芝居を変えられてしまうような作品に出会えて、役者としてすごく幸せ】

――昨年の再演に続き、今回は”読み聞かせ”に出演されますが、出演を決意した時の心境は？

松田　自分はこの『クロードと一緒に』という作品が好きでたまらない人間なので、もう一度「彼」を演じられることを素直に嬉しく思いました。
ただ、嬉しさと同時に今回は朗読劇という動きを制限される表現のなかで「言葉」「声」「心」「表情」で観客にこの物語を届けるのは、さらに難易度が高いんじゃないかなという不安もありました。
今回は朗読×映像×ライブ演奏が入るとのことで、舞台版とはだいぶ雰囲気が変わるでしょうし、役者同士が丸裸になって紡いできたものに、生演奏がどんなアクセントとして『クロードと一緒に』の世界観を彩ってくれるのか楽しみです。

――去年インタビューをした時に「心の準備が出来る前に”彼”が入って来ちゃったから、キービジュアル撮影で気分が悪くなった」という話がありましたね？

松田　あぁ、そんなこともありましたね。まぁ「男娼」の説明は受けて頭では理解していたけれど、同性愛に免疫がなかったというか(苦笑)。
でもある種の……ホント中毒性があって……。僕は多分、この世界から抜け出せないんだと思いますね。
1年経って改めて思うのは、僕はこの年齢で自分の芝居を変えられてしまうような作品に出会えて、役者としてすごく幸せだなということ。多分それは、今まで『クロードと一緒に』に関わったすべての方に言えると思うんですけど、ちょっと特別な思い入れがありますね。

――今回の”読み聞かせ”台本に目を通した印象や、前回との違いなどは感じていますか？

松田　朗読劇なので多少言い回しが変わっていたり、上演台本が違うことで「こういう解釈もあるんだな」という新たな発見もある、新しい風が吹く予感がします。

――「刑事」役の伊達暁(だて さとる)さんとは今回が初共演ですが、どんな印象の方でした？

松田　伊達さんが出演されていた、初演の『クロードと一緒に』の資料映像を拝見させていただいて、ステキな役者さんだなと思っていましたが、実際に顔合わせでご挨拶をして、話をさせていただいて、僕の中の「刑事」のイメージがいい意味でくつがえされたというか……。
やっぱり昨年の舞台で共演した、唐橋充さんと山口大地さんの「刑事」がすごく大きなものとして僕の中にあったんですけど、伊達さんの「刑事」がまた違う「彼」を引き出してくださるんだろうなっていう、ワクワク感がありました。

――舞台版では、体、表情、声……すべてを使ってやりあった「彼」と「刑事」が、今度は言葉だけでどこまで激しいやり取りを繰り広げるのか、非常に興味があります。

松田　僕、芝居では常に発散してしまうタイプで、”自分に問う”とか、”ギュッと凝縮させてコンパクトに表現する”というのを、苦手としていたんですよ。
だけど昨年の舞台を経験して、少しずつだけどそういうことが分かりつつある中で、また「彼」を演じるチャンスをいただけたので、今回の読み聞かせではまた違う視点で彼を演じて、繊細にこの物語を届けられたらいいなと思っています。

――発散できないと、なんかフラストレーション溜まりそうですね(苦笑)。

松田　そういうところも含めて”演じる”という事にやりがいを感じています。

――今回は、初演・再演と「警護官」を演じた鈴木ハルニさんが「速記者」役で出演されますね。

松田　この作品、ハルニさんの存在に助けられている部分が、すごく多いと思います。稽古場のコミュニケーションはもちろん、存在自体が作品をマイルドにしてくれる方なんですよ(笑)。
舞台『クロードと一緒に』は、「観客も呼吸しちゃいけないんじゃないか？」みたいな空気にさせる緊張感あふれる作品でしたが、緊迫したシーンにハルニさんが演じる警護官が登場すると、そこでちょっと空気が和らぐんです。
今回はハルニさんが「警護官」から「速記者」に代わるので、果たしてどうなるのか……。
おふざけは出来ない役ですけど、きっとハルニさん流の今までにない「速記者」を演じてくださると思うので、そこもひとつの見どころとして、皆さんにはぜひ注目していただきたいですね。

――ハルニさんのハードル上げていきましたね(笑)。

松田　どんどん上げていきます(笑)。でもホントに、きっといい意味で裏切ってくれると思います。間違いなくハルニさんのとりこになっちゃうと思いますよ。

今回の読み聞かせでは、どんな「彼」を演じるのか期待が高まります！

――本公演は、作品の設定と同じ日(7月4日～7月5日)に上演されますが、どこか運命めいたものを感じますね。何かが降りてきそうな予感がします？

松田　どうですかね？　僕は役に乗っ取られるような芝居はしたくないし、憑依みたいなことはあんまり好きじゃない。
「そこはそこ、これはこれ」っていう方が、演者としてスマートだなと思うので。まだ若いから、そう思っちゃうのかもしれないけど(苦笑)。
前回は「彼」に心をかき乱される瞬間があって、それは自分では「プロとしてそれはダメ！」と反省するポイントだったので、今回はフラットに役に向かうことが目標です。

――平日で、さらにたった3回だけの公演。来られない方も多いかと思いますが……。

松田　でも僕自身は、3公演で良かったと思ってます。多分この作品って役者の”欲”が出ると変な作品になっちゃう気がするんですよ。
自分がまだ分かっていない状態で、ガーッとなるくらいがちょうど良くて、自分の動きやすい呼吸が分かっちゃうと、朗読劇は特に良くないんじゃないかなと思ってて……。
ストレートプレイだったら前回(全10公演)ぐらいやりたいなとも思いますけど。

――いやいや、前回でも「足りないな」っていう声ありましたよ？　私も予定が合えばもう2～3回観たかったです。

松田　えぇっ！　僕は7公演目ぐらいで意識あるかないかぐらいだったんですけど(苦笑)。まぁ今回の作品設定の7月4日と、その翌日の5日という3公演は「なるべくして、そうなったんだ」と思います。そのたった3公演に”何”を見せられるかに、意味があるんだと思います。

――それらを踏まえたうえで、Lecture-Spectacle『Being at home with Claude～クロードと一緒に～』の上演を楽しみにされている皆さんに、メッセージをいただけますか？

松田　限られたスケジュールでご来場が難しい方も多いと思いますが「見逃してほしくないな」っていうのが正直な気持ちです。
前回の舞台でも何が起こるか分からないスリリングな作品を、今回このキャストで読み聞かせとして表現する……無謀ですけども、この挑戦から新たな”何か”が生まれると思うので、その瞬間を1人でも多くの方たちの目に焼き付けていただきたいです。
1人1人の中にそれぞれの『クロードと一緒に』が……「彼」や「刑事」が残るような芝居をしたいなと思います。

～後編に続く～

(取材・文／近藤明子)

Lecture-Spectacle『Being at home with Claude～クロードと一緒に～』は、7月4日～7月5日に新国立劇場 小劇場 THE PITにて上演。7月5日の2公演を対象に学生券も発売中。
当日券に関する情報など詳細は、Informationから公式サイトをチェックしてください。

※映画のR-15と同程度のセクシュアルな表現があるため、15歳未満の入場は不可。

☆Information

Lecture-Spectacle『Being at home with Claude～クロードと一緒に～』
日程:7月4日～7月5日
場所:新国立劇場 小劇場 THE PIT
作:ルネ=ダニエル・デュボワ
翻訳:イザベル・ビロドー／三宅優
上演台本・演出:杉本凌士［劇団　男魂(メンソウル)]
出演:松田凌　鈴木ハルニ　岩尾祥太朗／伊達暁
ライブ・ミュージシャン:水永達也
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《公式サイト》
http://www.zuu24.com/withclaude2016/
《公式Twitter》
@withClaude

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