劇団スタジオライフ『トーマの心臓』など萩尾望都作品を3/13まで上演中!公演画像UP

  • 2016-3-8

劇団員は男優のみで構成される人気劇団・スタジオライフが、劇団の看板演目とも言われる不朽の名作『トーマの心臓』上演20周年を記念した、3作連動公演を上演! 萩尾望都作品連鎖公演として、東京・シアターサンモールにて舞台『トーマの心臓』、『訪問者』、『湖畔にて~エーリク 十四と半分の年の夏』の3作品を3月13日まで上演しています。その中から、劇団から到着した『トーマの心臓』開幕レポートをステージ写真とあわせてご紹介いたします。

原作者・萩尾望都さんによるイラストビジュアルも公開に

原作者・萩尾望都さんによるイラストビジュアルも公開に

劇団スタジオライフは、1985年に結成され、昨年には創立30年を迎えた人気劇団。1987年からは男優が女性役をも演じるという手法をとり、現在は男優40名、女性は演出家の倉田淳さん1名のみという構成で、数々の舞台作品を上演しています。少年少女から美しい淑女まで、老若男女すべての役柄を男優のみによって描き出すことで生み出される耽美な世界観と、演出家・倉田淳さんの独創的な脚色力と美しく繊細な舞台演出が話題を呼び、20代から40代の女性を中心に、圧倒的な支持を得ています。

そして劇団スタジオライフの歴史を語る上で欠かせないのが、漫画家・萩尾望都さんによる名作の舞台化公演。美しく繊細な絵柄で、SFからファンタジー、心理サスペンスに少年愛まで、ジャンルを超えて丁寧に描く萩尾作品の文学的な世界観を、劇団スタジオライフは『11人いる!』や『マージナル』、『メッシュ』と多く上演してきました。

そんな萩尾望都さん×劇団スタジオライフの組み合わせで、幾度もの再演を繰り返し、今なお絶大な人気を誇る公演こそが、今回上演されている『トーマの心臓』。萩尾さんの代表作である今作は、ドイツのギムナジウムと寄宿舎を舞台に、そこで暮らす少年たちの傷つきやすく繊細な関係と心の動きを描き、『訪問者』、『湖畔にて~エーリク 十四と半分の年の夏』といった番外編も生み出されています。

劇団スタジオライフが1996年に『トーマの心臓』を初上演してから20年を迎え、今回は初の試みとして『トーマの心臓』、『訪問者』、『湖畔にて~エーリク 十四と半分の年の夏』の3作を萩尾望都作品連鎖公演として同時上演。同劇場にて同一期間内に、回替わりでの上演という初の試みを行っています。各公演のストーリー概要は下記のとおり。

■『トーマの心臓』
ドイツのギムナジウム(高等中学校)と寄宿舎生活を舞台に繰り広げられる物語。
冬の終わりの土曜日の朝、一人の少年が自殺した。彼の名はトーマ・ヴェルナー。
そして月曜日、一通の手紙がユリスモールのもとへ配達される。
「これが僕の愛、これが僕の心臓の音・・・」トーマからの遺書だった。
その半月後に現れた転入生エーリク。彼はトーマに生き写しだった。
人の心を弄ぶはずだった茶番劇。しかし、その裏側には思いがけない真実が秘されていた。

■『訪問者』
家庭内に居場所がないように感じていたオスカー・ライザーは、自分は父グスタフの子供ではないのではないかと疑っていた。
ある時、父グスタフは妻ヘラに事実を告げられ、衝動で彼女を撃ち殺してしまう。
オスカーは父が母を殺したこと、そして自分が父の子供でないことを悟る。
警察から必死に父をかばうオスカーは、父とともに逃亡の旅に出る――

■『湖畔にて~エーリク十四と半分の年の夏』(リーディング)
エーリクと義父シドとのボーデンでのひと夏の情景を描く。

【キャスト】
『トーマの心臓』
ユリスモール=山本芳樹、オスカー=笠原浩夫、エーリク=松本慎也、バッカス=曽世海司、レドヴィ=石飛幸治

『訪問者』
グスタフ・ライザー=楢原秀佳、オスカー・ライザー=久保優二、ヘラ=青木隆敏、ルドルフ・ミュラー=笠原浩夫

『湖畔にて~ エーリク 十四と半分の年の夏』
シュヴァルツ=楢原秀佳、エーリク=松本慎也、オスカー=笠原浩夫

ほかキャスト
牧島進一 関戸博一 仲原裕之 松村泰一郎 宇佐見輝 澤井俊輝 鈴木翔音
若林健吾 田中俊裕 江口翔平/倉本徹 藤原啓児 他
※シングルキャスト ※出演者は『トーマの心臓』『訪問者』のどちらにも全員出演
※出演者は都合により変更となる場合がございます。予めご了承下さい。

山本芳樹さん、笠原浩夫さん、松本慎也さんらがメインキャストを務める『トーマの心臓』と、楢原秀佳さん、久保優二さん、青木隆敏さんらがメインキャストを務める『訪問者』ですが、出演キャストは両作品に全員が出演。そしてリーディング公演として『トーマの心臓』とあわせて一部公演日に上演される『湖畔にて~エーリク十四と半分の年の夏』では、楢原秀佳さん、松本慎也さん、笠原浩夫さんが出演しています。

この連鎖公演の開幕に寄せ、ライター・大原薫さんが綴った『トーマの心臓』開幕レポートが到着。以下、全文をご紹介いたします。

■『トーマの心臓』開幕レポート 文/大原 薫

劇団スタジオライフが、20年を超え表現し続ける名作『トーマの心臓』上演中!

劇団スタジオライフが、20年を超え表現し続ける名作『トーマの心臓』上演中!

スタジオライフの『トーマの心臓』上演20周年を記念した、萩尾望都作品連鎖公演がいよいよ開幕。
連鎖上演される『訪問者』、リーディング『湖畔にて-エーリク十四と半分の年の夏』に先んじて開幕したのは『トーマの心臓』。少年たちの心情を瑞々しくたどりながら、人生の根源にある孤独と人と人とのつながりを詩情豊かに描いて、初日とは思えないほどの完成度を見せた。

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ドイツのギムナジウム(高等中学)で透明な時を生きる少年たちを描いた萩尾望都の原作が世に出たのが1974年。40年以上もの時を超えてなお人々に愛され続ける傑作を、初めてスタジオライフが舞台化したのが今から20年前のこと。今は漫画・アニメ・ゲームを舞台化する「2.5次元舞台」の上演がブームとなっているのが、『トーマの心臓』はその先駆けとなった作品だ。
しかし、昨今上演される2.5次元舞台と大きく異なるのは、単なる「キャラクターの再現」に留まらないということ。作品の持つ世界観を徹底的に再現しながら、心情の流れをデリケートに積み上げることによって、登場人物がそこに生きた人間として存在する。まさに「人間ドラマ」として舞台化したのだ。これは「『トーマの心臓』が上演したい」と熱望した脚本・演出の倉田淳が作品に心から共感し、萩尾が描いた本質に細やかに寄り添ったからこそ可能になったことだろう。

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劇団創立30周年記念公演第五弾として上演される今回公演の特徴は、乗峯雅寛による舞台美術とアニバーサリー・キャストだ。
第23回読売演劇大賞最優秀スタッフ賞を受賞した乘峯の舞台美術はグレーを基調とした2階建てのセットで、ドイツのギムナジウムの研ぎ澄まされた空気感を醸し出す。学校という閉鎖的な空間に、遥かな高みを感じさせる美術は秀逸だ。さらに、工夫を凝らして教室や寄宿舎、図書館など様々な空間を一瞬にして出現させ、スピーディな舞台転換を可能とする。
そして、アニバーサリーとして集まったレジェンド・キャスティング。1996年の初演でオスカーを演じた笠原浩夫が13年ぶりにオスカーを演じ、1997年の再演以来ユーリ役を演じ続ける山本芳樹が満を持して当たり役に挑む。そして、2014年公演ではユーリを演じた松本慎也が5年ぶりに3度目のエーリクを演じる。キャリアを積み重ねたキャストたちがいかにして少年たちとして生きるのか。大いに注目されるところだ。

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内面に迫る倉田演出によって、キャストは少年の心の揺らめきを自らのものとする。年月を重ねたからこそ、より新鮮に役柄に取り組めるというのが新たな発見で、演劇的な驚きでもあった。
罪の意識に悩むユーリ、彼の心に深く入り込んでいくエーリク、二人を見守るオスカー…、それぞれに欠損した部分を持つ少年たちがあるいは心を閉ざし、あるいは心を開きながら、確かに思いを通わせ合う物語。山本はユーリの孤独な心のひだを厳しく見つめ、憂いはさらに色濃くなった。松本はやんちゃな少年エーリクをのびのびと演じる。エーリクの素直な心が孤独なユーリに影響を与えていく心情の変化に大きなドラマがあった。そして、13年を経て再びオスカーに挑んだ笠原は、さらに役柄に奥行をもたらしてオスカーの人物像に肉薄する。
特筆すべきは石飛幸治のレドヴィで、ユーリを愛し亡くなった少年トーマの書いた詩を読むシーンに思いがあふれた。人は亡き人との関わりの中で影響を受け、思いを継いで生きることができるのだと、萩尾作品の根源にあるテーマを深く感じ取った。

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時は流れる。移ろいゆく少年をテーマとした作品を20年間同じ劇団で演じ続けるというのは、日本では類を見ないことだ。トーマの父親ヴェルナー氏を長年演じ続けた劇団代表、河内喜一朗は2014年の『トーマの心臓』公演中に他界した。しかし、河内の思いはこの作品の中に受け継がれ、劇団員たちは高みを目指す。劇団だからこそ作り得た舞台。20年の月日の持つ意味を感じさせる公演だった。

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さらに今回の連鎖公演ではオスカーの幼少期を描く『訪問者』と、『トーマの心臓』後日談となるリーディング『湖畔にて~エーリク十四と半分の年の夏』が上演される。『訪問者』では、父親と逃亡の旅を続ける少年オスカーを若手の久保優二が演じる。独立した物語世界を描きながらも、各公演を連鎖させることで、より奥深くそれぞれの作品世界に入り込むことができるだろう。

――以上、劇団スタジオライフから届いた『トーマの心臓』開幕レポートをご紹介しました。劇団の歴史を込めて新たに描き出す三篇からなる物語は、初めて劇団スタジオライフを知る方にも最適な作品です。
萩尾望都作品連鎖公演『トーマの心臓』、『訪問者』、『湖畔にて~エーリク 十四と半分の年の夏』は、3月13日まで東京・新宿シアターサンモールにて上演中。当日券などのチケット情報、各演目の上演スケジュールなど詳細はInformationから公式サイトをご確認ください。男優のみだからこそ生み出される、繊細で耽美な世界観で描かれる3作をお見逃しなく。

☆Information

スタジオライフ・萩尾望都作品連鎖公演
『トーマの心臓』
『訪問者』
『湖畔にて~エーリク 十四と半分の年の夏』
2016年2月24日~3月13日 シアターサンモール
原作:萩尾望都
脚本・演出:倉田 淳
《公式サイト》
http://www.studio-life.com/stage/toma2016/

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