関西版D-BOYSの若手俳優集団「劇団Patch」本公演が大盛況!&早くも次回公演が決定!!

  • 2015-1-6

「演劇で大阪を元気にしたい!」という大きな志のもと、関西を拠点とした様々なエンターテインメントを発信している「劇団Patch」。
関西弁で一生懸命を意味する「必死のパッチ」にその名を由来する彼らは、2012年4月、3000名以上の中から厳しいオーディションを通過したメンバーで、関西版「D-BOYS」として「劇団Patch」を結成。
2012年10月の旗揚げからハイペースで公演を重ね、2014年は3月に第4回公演として伝説的惑星ピスタチオの伝説的作品「破壊ランナー」を上演。さらに5月から「Patch8番勝負」として月1回の公演を8ヶ月続け、12月に8番目の勝負・第5回公演『観音クレイジーショー』を迎えた。

全12回公演を大盛況のうちに幕を閉じた、その公式観劇レポートをお届けする。

ただの生活がクレイジーなショーへと変貌していく……

ただの生活がクレイジーなショーへと変貌していく……

――「おもしろかったー! で、どういうこと?」

そんなハチャメチャな感想を抱かせる、山崎彬(悪い芝居)作・演出の劇団Patch第5回本公演『観音クレイジーショー』が、クリスマスイブに開幕、12月30日までの全12回公演、大盛況のうちに幕を閉じた。

8か月連続で毎月新たな作家と組む人気”武者修行”企画「Patch8番勝負」の集大成とあって、メンバーの個性と成長がスパークした見ごたえある作品となった。

主人公は恋愛をこじらせた26歳のバイト男子、大爆音(おおばく・おと)。彼の愛を巡る物語が友人らとの交流を通して描かれる、のだが。悶々とした現世に見切りをつけるよう今や「解脱」の道を模索し始めた音には、いつしか”人ならざるもの”が見え始めていた。
守護霊かはたまた肥大した自意識の化身か。”やつら”は常に音の周囲をうごめき、その一挙手一投足を注視する。やがて「観られること」に耐えかねた音がとった行動により、観客は予想だにしない世界へと引きずり込まれることになる……。

と設定だけ聞けばホラーだが、実際の”やつら”と言えばワンダーランドから抜け出たようなカラフルさ。必要とあれば扉、棚、便器などの小道具にもなり替わり、自らセットチェンジも行う。
具体的な美術に頼らず、限られた人とアイテムで多彩なシーンを想起させる。小劇場ならではの演出が楽しい。また大筋とは別にカラオケ、コンビニ、実家まで。場所を変えて描かれる音の日常は、”シチュエーションあるある”の連続で。デフォルメされたキャラクターもツッコミどころ満載。さらに場面転換ではメロウにもハードにも変化するバンドの生演奏が加わり、その都度、照明が効果的に明滅する……。

とにかく、あれもこれもと早口でまくし立てたくなるほどの濃密さ。瞬きの度に景色を変える、万華鏡のような舞台なのだ。

主人公・大爆音(おおばく おと)役の中山義紘

主人公・大爆音(おおばく おと)役の中山義紘

主人公を演じる中山義紘(ナカヤマ ヨシヒロ)は、持ち前の思慮深い眼差しからモラトリアムな役柄がよく似合う。悶々とした前半とは打って変わり、後半は振り切った演技で惹きつけた。
そんな音と対をなす、人ならざる開眼観役に三好大貴(ミヨシ ダイキ)。もともと雰囲気のある役者だが、本作では言葉を封じミステリアスな笑顔と行動で存在感を発揮した。
一方、リーダーの村川勁剛(ムラカワ ケイゴウ)は恋のライバル役で登場。フリルシャツを優雅に着こなし、華麗なるノリツッコミで場を盛り上げた。
また、トレードマークのヲタクキャラを封印し、真逆なヤンキースタイルで新境地を開いた山田知弘(ヤマダ トモヒロ)。同じく威勢のいい下町ヤンキーを演じた杞山星璃(キヤマ ショウリ)は、ベビーフェイスが返って怖さと軽さを助長させ想像以上にハマり役。
そんな不良に絡まれる、コンビニ店員役には中村圭斗(ナカムラ ケイト)。じつは同級生であることを悟られまいと変顔で接客するも、難なく認識されて通われる。シチュエーションあるあるにおける”被害者役”を泣き笑いで演じた。

平凡な日常の中にあって、音の混乱だけが止まらない。やがて”やつら”の視線に耐えかねた音が絶叫する。「お前ら、観てんじゃねえよ!」。その言葉を合図に突然、客席の電気が点った。全てがさらされた空間で見つめあうことになった音と観客たち。本番中に役者から「観られる」というありえない状況に、しばし思考が止まる。が、そんな観客の戸惑いを余所に、出演者らが一気に客席へとなだれ込む。モラトリアムなショーがフィナーレへと加速していく。

焦燥しきった音をカウントダウンへとけしかけたのが、弟の大爆流だ。物知り顔の突き抜けたキャラクターを伸び盛りの19歳、井上拓哉(イノウエ タクヤ)がのびのびと演じた。
そんな流に寄り添う人ならざるもの、パピルス役には松井勇歩(マツイ ユウホ)。普段は男気溢れる役柄が多い中、本作では珍しく従順かつ無邪気な設定。隠された本性を垣間見た気がした。
さらに、事あるごとに見せ場を作ったのが音を励ます旧友トリオだ。竹下健人(タケシタ ケント)は直球、吉本孝志(ヨシモト タカシ)は剛速球、岩﨑真吾(イワサキ シンゴ)は変化球といった力配分でテンポ良く場を沸かせ、サウナのシーンでは生着替えからの腰タオルで、細マッチョなボディも披露した。

音、今カレ、家族と、対峙する相手との距離感を絶妙な声色で演じ分けた彼女役の田中良子、”やつら”が慕う釈迦雄役をコミカルに演じた植田順平、向田倫子は音と流の母親役をトリッキーに演じるなど客演陣らの好演にも支えられた。

かくして物語は突如、終わりを迎える。終盤、本音を吐露する音の姿は、恥ずかしいくらいに純粋な愛の告白にも思えたが、あなたの目にはどう映っただろう。答えは観た人の数だけ存在する。そんな演劇の醍醐味に触れられた、忘れがたい時間となった。

公演初日には早くも次回本公演『SPECTER』の上演が告知された。作・演出の末満健一がライフワークに掲げる人気ヴァンパイア・シリーズ「TRUMP」の最新作とあって、今まで以上に期待と注目度が高まることは間違いない。2015年も声援を糧に躍進するPatchの活躍を、ぜひその目で見届けてほしい。
(取材・文/石橋法子)

☆Information

Patch stage vol.6『SPECTER』(スペクター)
日程:3月18日(水)~3月22日(日)全9公演
場所:大阪ABCホール(大阪市福島区福島1丁目1番30号)
作・演出:末満健一(ピースピット)
出演:劇団Patch・早川丈二・丹下真須美ほか
【チケット料金】
料金:前売4,800円、当日券:5,300円
※未就学児入場不可
【チケットに関するお問合せ】
[大阪]キョードーインフォメーション
TEL:06-7732-8888(全日10:00~19:00)
【公演に関するお問合わせ】
ワタナベエンターテインメント 関西事業本部
TEL:06-6941-5250(平日11:00~18:00)
《劇団Patchオフィシャルサイト》
http://www.west-patch.com/

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